「継」
正字(旧字体)は「繼」である。

白川静『常用字解』
「形声。音符は㡭ケイ。 㡭は織機にかけた糸を二つに断ち切っている形。切断した糸に糸を加えて、継は糸を“つなぐ、つぐ”ことをいう」

[考察]
「㡭(切断した糸)+糸」で「糸をつなぐ」の意味になるだろうか。意味展開に必然がない。糸は限定符号と見るべきだから、継は糸を切断するという意味になりそうなもの。
繼の成立には絶の古文が絡んでいる。絶の古文の「𢇍」は絶の異体字で、𢇍と㡭は鏡文字の関係にある。𢇍は㡭を左右反転させた形(裏から見た形)である。絶は『詩経』に出ており、語史が古い。𢇍も古いと考えてよい。だから𢇍の鏡文字として㡭が発生したと推測される。
𢇍は幺を上に二つ配置し、下に二つ配置し、それの中間にᖵ(=刀)を差し入れた図形である。この意匠によって、糸を断ち切る様子を暗示させる。斷の左側は楷書では㡭になっているが、篆文では𢇍になっている。斷は『詩経』に出ており、語史が古い。
以上のように先ず𢇍が創作され、それから𢇍を左右反転させた鏡文字である㡭が生まれた。『説文解字』に「反𢇍を繼と為す」とある。鏡文字は逆さ文字と同じような働きをすることがある。意味を逆転させることである。𢇍(断ち切る)の反対は「つなぐ」である。だから㡭は「つなぐ」を表すための記号である。かくて「㡭(音・イメージ記号)+糸(限定符号)」を合わせた繼は切れた糸をつなぐ状況を暗示させる。この意匠によって、a|bの形に切れたものをa→bの形につなぐという意味をもつ古典漢語ker(呉音ではケ、漢音ではケイ)を表記する。
a→bの形につなぐという意味から、aの後にbを続ける(後をつぐ、受けつぐ)という意味に展開する。次の①は前者、②は後者の意味で使われている。
①原文:繼絶世。
 訓読:絶世を継ぐ。
 翻訳:途絶えた家柄を継ぐ――『論語』尭曰
②原文:其或繼周者、雖百世可知也。
 訓読:其れ或いは周を継ぐ者、百世と雖も知るべきなり。
 翻訳:周の後を継ぐ者があるとしたら、百代の先まで知ることができる――『論語』為政