「警」

白川静『常用字解』
「形声。音符は敬。敬は犠牲とした羌人を跪かせ、前にᆸ(祝詞を入れる器)を置き、羌人を殴って何ごとかを祈る呪儀で、“いましめる” がもとの意味である。言葉を発していましめることを警という」

[考察]
敬の解釈の疑問については433「敬」で述べた。「羌人を殴って何事かを祈る」ことから「いましめる」の意味が出るだろうか。警は「言葉を発していましめる」という意味だろうか。
古典における警の用法を調べてみよう。
 原文:良將警之。
 訓読:良将は之を警(いまし)む。
 翻訳:立派な将軍はこれ[無駄な戦争]を戒めるのである――『孫子』火攻
警は身を引き締めて用心する(用心させる)、あるいは、注意を与えて戒めるという意味で使われている。警戒・警告の警はこの意味。これから、非常事態を取り締まる意味(警護・警備の警)、急所をついてはっとさせる意味(警句の警)に展開する。これらの意味の深層構造には「身を引き締める」というイメージがある。このコアイメージを表す記号が敬である(433「敬」を見よ)。したがって①の意味をもつ古典漢語kiĕng(呉音ではキヤウ、漢音ではケイ)を表記するために、「敬(音・イメージ記号)+言(限定符号)」を合わせた警が考案された。言は言語行為に関わる限定符号であって、意味素に含まれるわけではない。「言葉を発していましめる」の意味ではなく、ただ「いましめる」の意味である。