「血」

白川静『常用字解』
「会意。皿の中に血のある形。“ち、ちぬる”の意味に用いる」

[考察]
妥当な字源説である。
図形は「皿」の上に「−」の符号をつけて皿に入ったものを暗示させる。なぜ皿かと言えば犠牲となる動物から取った血液を保存するからである。盟という字は「明+血」から成っていた(現在の字体は「明+皿」)。犠牲の血を啜って誓いを立てることが盟とされる。
古典漢語で「ち」のことをhuet(呉音ではクヱチ、漢音ではクヱツ)といった。「犠牲のち」は特化した意味であって、動物と人間に関わりなく血液をhuetという。古人は「血は濊カイ(水が勢いよく流れるさま)なり」と語源を捉えている。血液循環という科学的思想ではないが、血液が体内を流れるものという漠然としたイメージを持っていた。huetの語源について藤堂明保は、骨・滑・回・囲・運・旬などと同源で、「丸い・めぐる・取り巻く」という基本義があるとし、「チを血と称するのは、それが全身を巡回し、また血塊が滑性を帯びているところからの命名であろう」と述べている(『漢字語源辞典』)。