「肩」

白川静『常用字解』
「象形。かたの形。戸の部分は肩胛骨が腕の骨に連なってはめこむ部分、骨臼といわれる部分の側面の形。そこは周囲が強い腱肉で固められているから肉(月の形)をつけ加える。骨臼部分を中心とした肩を示し、“かた” の意味に用いる」

[考察]
六書(漢字の六つの構成原理)の規定は当てはまらないことも多く、本項の象形の規定はおかしい。戸は「かた」の形であるから象形であるが、肩は「戸+肉(限定符号)」から成ることは明らかだから、強いて言えば会意であろう。同様の例は胃にも見られる。ちなみに『常用字解』の「胃」では会意としている。六書の規定はむしろ廃止したほうがよい。
肩は古典で次の用例がある。
①原文:賜之牆也、及肩。
 訓読:賜の牆や、肩に及ぶ。
 翻訳:賜[子貢]の垣根は肩まで届く――『論語』子張
②原文:竝驅從兩肩兮
 訓読:並び駆りて両肩に従ふ
 翻訳:並んで馬を走らせ、イノシシ二頭の後を追う――『詩経』斉風・還

①は「かた」の意味、②は注釈によると三歳の獣(あるいはイノシシ)の意味で、豣ケンとも書かれる。人の肩まで届く丈に成長した獣が豣である。肩は幵ケンと同源の語と考えられる。幵は「左右に並んでそろう」「平らにそろう」というイメージがある(463「研」を見よ)。腕の最上部で、左右両側にある平らな部分を古典漢語でkănといい、これを肩と表記する。「戸」は門戸の戸ではなく、ᒥの形をなす「かた」を表した図形(符号)。ただし単独字ではない。肉(月)は身体と関係があることを示す限定符号である。