「圏」

正字(旧字体)は「圈」である。

白川静『常用字解』
「形声。音符は卷(巻)。巻には爪のついた獣の掌の皮を捲きこむという意味があり、そのようにまるく囲んだ範囲を圏という。檻ではなく、放し飼いのできるような場所であろう」

[考察]
「まるく囲んだ範囲」は圏の意味の一つ。しかし「放し飼いする所」は奇妙である。こんな意味はない。
圏は古典で次の用例がある。
①原文:似圈、似臼。
 訓読:圏に似、臼に似る。
 翻訳:檻に似、臼に似ている――『荘子』斉物論
②原文:強國爲圈。
 訓読:強国を圏と為す。
 翻訳:[弱国は]強国の圏内とする――『管子』幼官

①は家畜などを囲って養う檻の意味、②は周囲を囲った区域、区切られた範囲や枠の意味である。この意味の古典漢語はgiuăn(呉音ではゴン、漢音ではクヱン)という。これを代替する視覚記号として圈が考案された。
圈は「卷(音・イメージ記号)+囗(限定符号)」と解析する。卷は「丸く取り巻く」というイメージがある(213「巻」を見よ)。囗は囲みと関係があることを示す限定符号である。したがって圈は周囲を柵などで丸く取り巻いた囲いを暗示させる。この図形的意匠によって①の意味をもつgiuănを表記する。
転義は「丸く取り巻く」というコアイメージから展開する。②は圏内・圏外・大気圏などの圏である。また、丸い形(丸い点や輪)という意味にも転じる。圏点などの圏はこの意味。