「弧」

白川静『常用字解』
「形声。音符は瓜。瓜を音とするのは、瓜の形がゆるく湾曲しているので、弓をその形になぞらえたものであろう。弧は“ゆみ、弓なりの形のもの”をいう」

[考察]
一般に形声の説明原理をもたないのが白川漢字学説である。言葉という視点がないからそれは当然であろう。しかし本項では瓜という音に言及している。ただし白川学説では音は漢字の読み方という考えであって、漢語の音、すなわち漢語そのものという考えではない。だから弓を湾曲した瓜になぞらえたという解釈しかできない。
では言葉という視点に立つとどうのように語源・字源を説くことになるか。
まず言葉の意味を確かめる。意味は古典に使われる文脈から知られる。
 原文:弦木爲弧。
 訓読:木を弦(ま)げて弧を為(つく)る。
 翻訳:木を曲げてゆみを作った――『易経』繫辞伝下
この文脈から「弧は「ゆみ」の意味であることが分かる。弓はその形態的特徴から「⁀」の形を呈するとイメージされる。「⁀形に曲がる」というイメージをもつ記号に瓜がある(502「孤」を見よ)。かくて「瓜(音・イメージ記号)+弓(限定符号)」を合わせた弧という図形が考案された。