「個」

白川静『常用字解』
「形声。音符は固。固は固定した一定の形のもの。個は相手のない片方だけのものをいい、“ひとつ、ひとり” の意味となる。ものを数えるときにそえる語の个・箇と同じように、一個・二個のように用いる」

[考察]
「固定した一定の形のもの」の意味から、なぜ「相手のない片方だけのもの」の意味になるのか、理解しがたい。片方だけのものから「ひとつ、ひとり」の意味に転じたというのであろうが、この意味は個個(一個一個の意で、個は助数詞)の場合にしか使われない。個物・個人・個別などの使い方は近代になってからの用法である。
個は最初から助数漢字(助数詞を表すための漢字)である。ただし先秦時代にはなく、漢代以後の用例がある。
個は「固(音・イメージ記号)+人(限定符号)」と解析する。固は「固い」というイメージがある(506「固」を見よ)。液体のような連続した形のものはそのままでは数えられないが、固体は独立した形あるものであるから数えられる。そのような独立した人や物を数えるための助数詞(数詞に添える補助な言葉)を固と同音でkag(後にka、呉音・漢音でカ、唐宋音でコ)と呼び、個と表記した。先秦ではすでに箇が生まれている。個と箇は用法が同じであるが、日本では使い分けている。