「鼓」

白川静『常用字解』
「会意。もとの字は壴コと攴とを組み合わせた形。壴は鼓の形、攴には打つの意味がある。鼓は鼓を打つ形で、“つづみをうつ、うつ、つづみ”の意味となる」

[考察]
壴の音がコなら形声になるはず。しかし壴はチュの音で、樹に含まれている。喜の上部(口を除いた部分)も壴である。また、鼓の右側の支を攴の変形とするが、支のままでよい。
壴は太鼓を立てた形、支を丈の棒を手に持つ形で、鼓は「壴+支」を合わせて、太鼓をたたく情景というのが図形的意匠である。意味は図形から出てくるのではなく、言葉の意味やコアイメージを図形に表現したのである。意味は言葉が使われる文脈から出てくる。鼓は次の用例がある。
①原文:擊鼓其鏜 踊躍用兵
 訓読:鼓を撃つこと其れ鏜トウたり 踊躍して兵を用う
 翻訳:合図の太鼓をドンと鳴らしゃ 躍り上がって武器を取る――『詩経』邶風・撃鼓
②訓読:我有嘉賓 鼓瑟鼓琴
 訓読:我に嘉賓有り 瑟を鼓コし琴を鼓す
 翻訳:嬉しいお客がやってきた 大琴・小琴をかき鳴らす――『詩経』小雅・鹿鳴

①はつづみの意味、②は楽器を奏でる(打楽器をたたく、弦楽器を弾く)の意味で使われている。これらの意味をもつ古典漢語がkuag(呉音ではク、漢音ではコ)という。この聴覚記号を視覚記号に切り換えて鼓が考案された。
漢字は意味→形の方向に見るのが正しい漢字の見方である。