「拘」

白川静『常用字解』
「形声。音符は句。勹は身を曲げた死者を横から見た形。それに祝詞を入れる器(ᆸ)を加えて、死者を埋葬する意味を示すのが句である。人を執えて、身を屈するようにおさえることを拘という」

[考察]
拘に「人を執えて、身を屈するようにおさえる」という意味があるだろうか。拘は古典では次のうように使われてる。
 原文:楚懷王拘張儀、將欲殺之。
 訓読:楚の懐王、張儀を拘(とら)へ、将に之を殺さんと欲す。
 翻訳:楚の懐王は張儀をとらえ、彼を殺したいと思った――『戦国策』楚策

拘は引き留めて自由を奪う(捕らえる、拘束する)の意味で使われている。これを古典漢語ではkiug(呉音・漢音ではク)といい、これを代替する視覚記号として拘が作られた。
句は「かぎ形に曲がる」というイメージがある(397「句」を見よ)。このイメージは「かぎ形で小さい範囲に区切る」というイメージに展開する。したがって「句(音・イメージ記号)+手(限定符号)」を合わせた拘は、狭い仕切りの中に押し込める情景を設定した図形。この意匠によって、人を捕まえて自由を奪うことを意味するkiugを表記する。