「紅」

白川静『常用字解』
「形声。音符は工。白味のある赤色、桃紅のような色をいう」

[考察]
形声の説明原理がないため会意的に説くのが白川漢字学説の特徴であるが、本項では会意でも説明がつかず、字源を放棄している。
色の命名法は①色の性質あるいは色から受ける人間の感覚に基づくもの、②自然界における色彩から名づけられたもの、③染料など加工の過程によるものなどがある。紅は③の染料の工法に由来する。茜(植物のアカネ)から染料として得られる色が紅であり、白みがかった赤色である。
紅は「工(音・イメージ記号)+糸(限定符号)」と解析する。工は「突き通す」というイメージがある(525「工」を見よ)。糸は糸や布を染める染料に関係があることを示す限定符号(緑・紫などの糸と共通)。したがって紅は絹地(白色)に茜の汁を突き通して染める状況を暗示させる。この意匠によって桃色を意味する古典漢語ɦung(呉音ではグ、漢音ではコウ)を表記する。