「郊」

白川静『常用字解』
「形声。音符は交。交は足を組んで立っている人の形で、二つのものが相接するという意味があり、郊とは他の邑と相接するような所をいうのであろう」

[考察]
ほぼ正しい説である。ただし交に「二つのものが相接する」という意味はない。「二つのものが×形に交わる」というイメージはある。意味とイメージは違う。イメージは言葉の深層にあるもので、そのコアイメージが表層において意味を実現させるのである。具体的文脈において使われる際の、その使い方こそ意味である。
古典に次の用例がある。
 原文:孑孑干旄 在浚之郊
 訓読:孑孑ケツケツたる干旄 浚の郊に在り
 翻訳:ぽつんと立つヤクの尾の旗竿が 浚の郊外に現れた――『詩経』鄘風・干旄

郊は都城の外側の地(都市の周辺の地)の意味で使われている。これを古典漢語でkɔg(呉音ではケウ、漢音ではカウ)という。これを代替する視覚記号が郊である。
郊は「交(音・イメージ記号)+邑(限定符号)」と解析する。交にコアイメージの源泉がある。交は「×形に交差する」というイメージがある(532「交」を見よ)。×の形は二つの線が反対方向に交わるから、⇆の形でも「交差」のイメージが表せる。だから交は「⇆形に行き交う」というイメージにもなる。邑(阝)は町や村などに関わる限定符号。したがって郊は都市と交わって行き来できる町や村を暗示させる。この意匠によって、都市の周辺の土地を意味するkɔgを表記する。