「校」

白川静『常用字解』
「形声。音符は交。交は足を組んで立っている人の形。屋根に千木(交叉した木)のある建物を校という。校は“まなびや、ならう”のほかに、較と通用して“くらべる、はかる、かぞえる”の意味に用いる」

[考察]
屋根に交叉した木のある建物がまなびや(学舎)だというが、これに必然性があるだろうか。また、「くらべる」の意味を較の仮借とするが、言葉の捉え方に問題がある。
古典で校がどのように使われているかを調べるのが先である。次の用例がある。
①原文:屨校滅趾。
 訓読:校を屨(は)きて趾を滅す。
 翻訳:足かせを装着して足を傷つける――『易経』噬嗑
②原文:六厩成校。
 訓読:六厩に校を成す。
 翻訳:六つのうまやに柵を造る――『周礼』夏官・校人
③原文:校之以計。
 訓読:之を校するに計を以てす。
 翻訳:数の計算で[敵味方の軍事力を]比較する――『孫子』計
④原文:夏曰校、殷曰序。
 訓読:夏には校と曰ひ、殷には序と曰ふ。
 翻訳:[まなびやを]夏の時代では校といい、殷では序といった――『孟子』滕文公上

①は手足にはめる刑具(かせ)の意味、②は進入を遮る構造物(矢来や柵・バリケード)の意味、③はAとBを引き合わせて見比べる意味、④はまなびやの意味で使われている。①~③の言葉を古典漢語ではkɔg(呉音ではケウ、漢音ではカウ)という。④の場合はɦɔg(呉音ではゲウ、漢音ではカウ)という。これらをともに校という視覚記号で代替する。
校は「交(音・イメージ記号)+木(限定符号)」と解析する。交は「×形に交差する」というイメージがある(532「交」を見よ)。校は×形に交差させた木を暗示させる図形。これは手足に×形にはめるものでもあり(①の場合)、木を×形に交差させて進入を防ぐもの(②の場合)でもある。また「×形に交わる」というコアイメージから、AとBを交互に見比べる(正しいかどうかを調べる)という意味を派生する。これが③で、校正・校閲の校はこの意味。また「×形に交差する」というイメージは「⇄形に行き交う」というイメージに展開し、師匠(先生)と弟子(生徒)が交わって知識をやりとりする場所(まなびや)の意味が生じた。これが④であるが、①~③の言葉の発音を少し変えてɦɔgとなった。