「耕」

白川静『常用字解』
「形声。音符は井セイ。玉篇に畊を正しい字形としている。耕・畊はいずれも古い資料がなく、文字の成り立ちを明らかにすることができない」

[考察]
形声の説明原理がなく会意的に説くのが白川漢字学説の特徴であるが、本項では会意的にも説明がつかず、字源を放棄した。
古典には次の用例がある。
 原文:載芟載柞 其耕澤澤
 訓読:載(すなわ)ち芟(か)り載ち柞(き)り 其の耕すこと沢沢たり
 翻訳:雑草を刈り 雑木を切り 田を耕す音がサクサクと――『詩経』周頌・載芟

耕は田畑をたがやす意味である。これを古典漢語でkĕng(呉音ではキヤウ、漢音ではカウ)という。これを代替する視覚記号として耕が考案された。
耕は「井ケイ(音・イメージ記号)+耒(限定符号)」と解析する。井は井戸の井セイとは別で、刑・形の基幹記号である井(开はその変形)と同じでケイと読む。井は「四角い枠」というイメージというイメージを表す(418「刑」を見よ)。このイメージは「四角に区切る」というイメージ、またここから「切れ目をつける」というイメージにも展開する。耒は鋤(すき)と関係があることを示す限定符号である。したがって耕は鋤で田畑に切れ目を入れる情景を暗示させる図形。この図形的意匠によって、上記の意味をもつkĕngを表記する。