「港」

白川静『常用字解』
「形声。音符巷。巷は道がいくつかに分かれる所であるちまたの意味である。巷にさんずいを加え、分かれた道を分かれた川の意味とした」

[考察]
白川漢字学説は形声の説明原理がないので、会意的に説くのが特徴である。巷(道がいくつかに分かれた所、ちまた)+水→分かれた道から分かれた川と意味を導く。
巷に「道がいくつかに分かれた所」という意味があるだろうか。巷に「ちまた」の訓がついたので、日本語の「ちまた」から類推してそんな意味を考えたのであろうが、古典漢語のɦŭng(巷)は町中の通り道の意味である。
また、「分かれた道を分かれた川」とはどういうことか。理解に苦しむ。
巷は「共+邑」(篆文の字体)から「共+㔾(巳)」(隷書の字体)に変わったもの。「共(音・イメージ記号)+邑(限定符号)」と解析する。共は「一緒にそろう」というイメージがある(349「共」を見よ)。具体的文脈では何人かが(みんなが)一緒になる(ともにする)、一緒にそろって(ともに)という意味を実現する。したがって村や町の中で人々が一緒にそろって行き来する場所を暗示させるのが巷である。これは町中の通り道である。スムーズに行き来できる道なので、「ルートを通る」というイメージが生まれた。だから港は川や湖に船を通す水路の意味である。船の発着所(みなと)はここから転義した。