「酵」

白川静『常用字解』
「形声。音符は孝。玉篇に“酒酵なり” とあって、酒を醗酵させるもと、“こうじ”をいう」

[考察]
白川漢字学説は形声の説明原理がなく会意的に説く特徴がある。本項では会意で解けず、字源を放棄した。
形声の説明原理とは言葉の視点に立ち、言葉の深層構造に掘り下げる方法である。
酵は六朝時代の頃に作られた漢字であるが、漢字の造形法に忠実に作られている。漢字の造形法とは言葉の意味のイメージを図形に表現することである。特に形声的な手法による字は言葉の深層構造を捉えて造語・造形される。
酵は「孝(音・イメージ記号)+酉(限定符号)」と解析する。孝は「大事にかばう」「大切に養う」というイメージがある(541「孝」を見よ)。酵は大切に寝かせておく酒を造るもとを暗示させる。酒のもと(こうじかび)のことを酵で表す。