「講」

白川静『常用字解』
「形声。音符は冓。冓は同じ形の飾り紐を上下に繫ぎ合わせた形で、組み合わせるの意味がある。ことばを組み立てて説きあかすこと、また考えることを講という」

[考察]
この字源説はほぼ妥当である。ただ冓の解釈に疑問がある。冓は同じ形の飾り紐を繋ぎ合わせた形というが、これを図示するとㅁ-ㅁの形で、「繋ぎ合わせる」という意味になりそうなものである。「組み立てる」とは少しイメージが違う。
講の用例を古典から見てみる。
①原文:請講以所聞。
 訓読:請ふ、講ずるに聞く所を以てせん。
 翻訳:聞いたことをお話ししましょう――『荘子』徳充府
②原文:德之不脩、學之不講(・・・)是吾憂也。
 訓読:徳の脩まらざる、学の講ぜざる(・・・)是れ吾が憂ひなり。
 翻訳:徳が十分修まらないこと、学問が十分習得できないこと、これが私の悩みだ――『論語』述而

①は相手が分かる(納得する)ように説明する意味、②はこちらが納得するように習う意味である。これを古典漢語ではkŭng(呉音ではク、漢音ではカウ)という。これを代替する視覚記号が講である。
講は「冓(音・イメージ記号)+言(限定符号)」と解析する。冓は上と下に同形のものが向き合っていることを示す象徴的符号で、上下相称・左右相称のイメージを作り出し、「バランスよく組み立てる」というイメージを示す記号とする( 576「構」を見よ)したがって講は言葉を使って双方がバランスよくかみ合うようにする状況を暗示させる。この図形的意匠によって①の意味をもつkŭngを表記する。