「購」

白川静『常用字解』
「形声。音符は冓。冓は同じ形の飾り紐を上下に繋ぎ合わせた形で、結び合わせるの意味がある。両者の間で売買の関係が成立することを購という」

[考察]
この字源説は当たらずといえども遠からずである。字形から意味が出るのではなく、意味は言葉が使われる文脈にある。文脈から判断して認知するのが意味である。購は古典で次のような文脈で使われている。
 原文:若吿之吏、皆購之。
 訓読:若し之を吏に告ぐれば、皆之を購(あがな)はん。
 翻訳:もし役人に告げれば、全部金銭で買い取ってもらえるでしょう――『墨子』号令
購は罪人の身柄を金で買い取る意味に使われている。これから、賞金を懸けて物を求める意味、また、代価を払って物を買う意味に展開する。これらの意味をもつ古典漢語をkug(呉音ではク、漢音ではコウ)という。これを代替する視覚記号が購である。
購は「冓(音・イメージ記号)+貝(限定符号)」と解析する。冓は上と下に同じ形のものが向き合ったことを示す象徴的符号で、上下相称・左右相称のイメージを作り出し、「(双方に)バランスよく組み立てる」というイメージを示す記号とならる(576「構」を見よ)。購は売り手と買い手の間で条件がうまくかみ合って取り引きが行われる状況を暗示させる。この図形的意匠によって、上記の意味をもつkugを表記する。