「拷」

白川静『常用字解』
「形声。音符は考。罪人を拷(う)って取り調べることを拷という」

[考察]
白川漢字学説には形声の説明原理がなくすべて会意的に説くのが特徴である。本項では考から説明できないので、字源を放棄している。
拷は後漢以後に作られた字である。『詩経』には考が「たたく」という意味で使われている。
 原文:子有鍾鼓 弗鼓弗考
 訓読:子シに鍾鼓有るも 鼓せず考せず
 翻訳:お前には鐘と太鼓があるけれど 鳴らしもせず叩きもしない――『詩経』唐風・山有枢

考は「つかえて曲がる」というイメージがあり(538「考」を見よ)、「曲折する」というイメージにもなる。物を曲折させる前提の行為が「たたく」である。だから考に「たたく」の意味が生じた。原因(たたく)と結果(曲がる)を入れ換えるのは換喩というレトリックである。
「考(音・イメージ記号)+手(限定符号)」を合わせて拷が作られた。「たたく、打ちすえる」という意味である。白川のいう「罪人を打って取り調べる」は拷問という熟語の意味であって、拷はただ「たたく」の意味である。