「穀」
正字(旧字体)は「穀」である。

白川静『常用字解』
「形声。音符は㱿カク。㱿は穀物の実を叩いて脱穀する形で、その脱穀されて中が空になったものが㱿である。からに禾(いね、穀類)が入っているものが穀である。穀は“こくもつ”、穀類すべてをいう」

[考察]
㱿の字解の疑問については182「殻」で述べた。
本項では、穀物の実を叩いて脱穀する→脱穀されて中が空になったもの→殻に稲が入っているもの、これが穀物だという。意味の展開に不自然さを感じる。同語反復である。
㱿は殻のもと字である(182「殻」を見よ)。㱿の字源については諸説紛々で定説はないが、「貝殻を紐でぶら下げた首飾りの形」とする藤堂説が妥当である。貝殻から発想を得た言葉がk' ŭk(殻)のようである。この言葉は「中空の固い外皮」という意味で使われている。外側が固く中が空っぽになったものである。もともとこんな形状のものをたたくという意味で使われたらしい(『説文解字』では「撃つ」と語義を説く)。しかし専ら「中空の固いから」という意味が優勢になった。
かくて穀の語源・字源が見えてくる。「㱿カク(音・イメージ記号)+禾(限定符号)」と解析する。㱿は「中空の固いから」というコアイメージがある。禾はイネなどの作物と関係があるに限定する符号。したがって穀は固い殻をかぶった稲のもみを暗示させる。この図形的意匠によって作物(イネ・アワ・ムギなど)を意味する古典漢語kukの視覚記号とした。