「骨」

白川静『常用字解』
「象形。肉が残っている胸骨より上の骨の形。冎カは胸より上の骨の形。下部の月は肉の形。骨は肉つきの骨で、“ほね”の意味となる」

[考察]
肉が残っている胸骨より上の骨とはどんなものであろうか。肉付きのあばら骨か。こんなものを描いた象形文字とは考えにくい。骨は「冎+肉」と分析できるのに象形とは変である。会意と規定すべきであろう。
白川漢字学説には言葉という視座がない。字形から意味を求めようとする。
言葉という視座に立って、歴史的、論理的に骨の成り立ちを考える。
「ほね」のことを古典漢語ではkuət(呉音ではコチ、漢音ではコツ)という。この聴覚記号を視覚記号に切り換えて骨という図形が考案された。ただの「ほね」は図形化しにくいので、関節に着目して造形が行われた。古人は関節をどう見たであろうか。おそらく穴の開いたほねに別のほねがはまり込んで、筋肉で覆われてつながり、これによって自由に動く機能が生まれると考えたであろう。実際は関節腔にある滑液が動きをもたらす。関節を描いた図形が冎や咼である(129「過」を見よ)。骨は「冎+月(肉)」を合わせて、肉でつながった関節の骨を暗示させる図形である。
なぜ「ほね」をkuətと呼んだのであろうか。古人は「骨は滑なり」と語源を捉えている。藤堂明保は骨や滑は血・回・鬼・胃・囲などと同源で、「丸い・めぐる・取り巻く」という基本義があるという(『漢字語源辞典』)。図形で表すと↻の形である。〇の形でもよい。丸・丸い・丸く回るは連合するイメージである。「丸く回る」から「自由に動く」というイメージも生まれる。「ほね」をkuətと呼んだのはこれらのグループとの同源意識からである。「ほね」はおおむねつながって関節を構成し体の骨骼となる。体を自由に動かせるのは「ほね」(特に関節)があるからである。だから「ほね」をkuətと呼ぶ。またそのための図形を関節で示した。
滑に「なめらか」「すべる」の意味があるのは以上から明らかである。