「根」

白川静『常用字解』
「形声。音符は艮。艮は目の下に後ろ向きの人の形(匕)をかく。目は呪眼。人に呪いをかけ、災いを与える力を持つ呪眼に会って進むことができなくて退く人の形が艮で、遮られるの意味がある。木の根が容易に伸びることができず、固まりふくらんだ所を根という」

[考察]
艮の解釈の疑問については252「眼」で述べた。艮に「遮られる」の意味があるというが、そんな意味はない。また、「木の根が容易に伸びることができず、固まりふくらんだ所」とは何のことか。生長が遮られるのは病的な状態であろうか。生長できず固まったものが根とは奇妙である。
古典では次のように使われている。
 原文:集於草木根。
 訓読:草木の根に集まる。
 翻訳:[水は]草木の根に集まってくる――『管子』水地
根は草木の「ね」の意味である。どんな「ね」にも限定されない。これを古典漢語ではkən(呉音・漢音でコン)といい、その視覚記号が根である。
根は「艮コン(音・イメージ記号)+木(限定符号)」と解析する。艮は目の周りに傷をつける状況を設定した図形で、「いつまでも痕を残す」というイメージを表すための記号である。このイメージは「いつまでもじっと止まって動かない」というイメージにも展開する(艮は「止まる」の意味がある)。植物の「ね」は土中にあっていつまでも動かないし、本体が枯れても痕跡が残っている。この特徴を捉えて「ね」をkənといい、根という図形が考案された。
艮のグループには「いつまでも痕を残す」という共通のコアイメージがある。眼・銀・限・恨・根・墾・懇など。痕(きずあと、あと)にはこのイメージがはっきり表れている。