「魂」

白川静『常用字解』
「会意。云ウンは雲のもとの字で、雲気(雲)の形。鬼は死んだ人の人鬼で、霊となって霊界にあるものをいう。“たましい” をいう。人のたましいは、死後に雲気となり、霊界に入るものとされた」

[考察]
形声の説明原理がなくすべて会意的に説くのが白川漢字学説の特徴である。云(雲気)+鬼(人鬼)→死後に雲気となって霊界にあるもの(たましい)という意味を導く。
雲気(雲)は目に見える実体であろう。霊魂が雲となるというのが解せない。会意的に説くと実体がそのまま意味に加わり、意味を不自然にする。
魂は云を音符とする形声文字というのが古来の通説である。形声の説明原理は言葉という視点に立ち、言葉の深層構造に掘り下げて意味を解明する方法である。
魂は「云(音・イメージ記号)+鬼(限定符号)」と解析する。云は何かの気体(雲気や蒸気のようなガス状のもの)が巻いて空中に漂う状況を図にしたものである。これによって「(気のようなものが)もやもやと空中に漂う」というイメージを表すことができる。実体ではなく形態や機能に重点を置くのが漢字の造形法である。云は雲の原字とされているが実体を表すのではなく、「もやもやと空中に漂う」というイメージを表すのである。
古代には「たましい」に二種類あるという考え(信仰、宗教的観念)があった。一つは人の死後地中に帰って白骨に宿るという「たましい」、もう一つは死後天に上っていくという「たましい」である。前者をp'ăkといい、魄と書く。後者をɦuənといい、魂と書く。鬼は亡霊と関係があることを示す限定符号である。