「佐」

白川静『常用字解』
「形声。音符は左。左は左手に呪具を持って祈り、神のいる所を尋ね、神の佑助を求めることをいい、“たすける” の意味がある。その意味を確定させるために、にんべんを加えて佐とした」

[考察]
「神の佑助を求める」の意味がなぜ「たすける」の意味になるのであろうか。「左はもと神に関する事がらに用いる語であったが、人間に関する事がらには佐を用いる」という。左が「神の佑助を求める」という意味ならば、佐は「人間に祐助を求める」の意味になるのであろうか。佐にこんな意味はない。
佐は古典で次のように使われている。
 原文:王于出征 以佐天子
 訓読:王于(ここ)に出征す 以て天子を佐(たす)く
 翻訳:王は戦に行った 天子様をお助けして――『詩経』小雅・六月

佐は救助の意味ではなく輔佐の意味である。側についてたすけることを古典漢語でtsar(呉音・漢音でサ)という。これを代替する視覚記号が佐である。
佐は「左(音・イメージ記号)+人(限定符号)」と解析する。左は左手の機能(働き)に着目して生まれた図形である。左手は右手を支える補助的な働きをするので、「中心にあるものを脇から支える」というイメージがある(612「左」を見よ)。したがって佐を人を支えてたすける状況を暗示させる。
左は「脇から支えてたすける」という意味も派生したが、この意味ではすでに最古の古典でも佐が使われている。左は神に関して、佐は人間に関して用いるという使い分けはない。