「唆」

白川静『常用字解』
「形声。音符は夋シュン。唆は人を“そそのかす” の意味で、その時のそそのかす声を擬声的に写した語であろう」

[考察]
形声の説明原理がなく会意的に説くのが白川漢字学説の特徴である。本項では会意的に説明できず、擬音語とした。
唆は唐宋以後に創作された字である。それ以前はそそのかすことを嗾ソウといった(使嗾の嗾)。唆は嗾から派生した語である。嗾とは相手に迫って速く速くとせき立てて何をさせようとする(けしかける・そそのかす)という意味である。
唆を構成する夋は酸・俊などに含まれ、「細い」「細く引き締める」というイメージがある(674「酸」を見よ)。「夋(音・イメージ記号)+口(限定符号)」を合わせて、口を細く突き立てて(口笛を吹く格好で)、犬などをけしかけて合図をする状況を暗示させる。この図形的意匠によって「そそのかす」の意味をもつsua(唐宋音でサ)を表記した。