「採」

白川静『常用字解』
「形声。音符は采。采は木の上に手(爪。指先)を加えて、木の実を手で摘み取るの意味である。采が採のもとの字である。采が色どりの意味に用いられるようになって、“とる” の意味には手へんを加えた採が使われるようになった」

[考察]
字源説としてはほぼ妥当である。しかし采に「木の実を摘み取る」という意味はない。ただ「摘み取る」の意味である。
採は古典に次の用例がある。
①原文:散而條達者樵採也。
 訓読:散じて条達する者は樵採なり。
 翻訳:塵が舞って筋をなして上がるのは、敵軍が炊事用の薪を採っているのである――『孫子』行軍
②原文:有物採之。
 訓読:物有れば之を採る。
 翻訳:物があればそれを取り上げる――『荘子』天地

①は摘み取る意味、②はいろいろな中から一部だけを選び取る意味に使われている。これを古典漢語ではts'əg(呉音・漢音でサイ)という。これを代替する視覚記号が採である。
採は「采(音・イメージ記号)+手(限定符号)」と解析する。采は「一部を選び取る」というイメージがある(628「彩」を見よ)。採は指先(爪先)で摘み取ることを暗示させる。采と同義である。
「一部を選び取る」というコアイメージから②の意味に展開する。これが採択・採用の採である。