「菜」

白川静『常用字解』
「形声。音符は采。采は木の上に手(爪)を加えて、手で木の実を摘み取るという意味である。菜は“な、やさい” をいう」

[考察]
「手で木の実を摘み取る」から「な」への意味展開の説明がないのではっきりしない。
白川漢字学説では形声の説明原理を持たず会意的に説くのが特徴である。だから「手で木の実を摘み取る」という意味とするため、「な」への展開がスムーズにいかないのである。
菜は非常に古い語で、すでに『詩経』に荇菜(アサザ)という用例がある。荇だけでアサザの意味だが、菜をつけたのはそれが食用になるからである。菜とは食用にする草の意味である。
字源は「采(音・イメージ記号)+艸(限定符号)」と解析する。采は摘み取るという意味だが、その根底(核、コア)には「一部を選び取る」というイメージがある(629「採」を見よ)。だから菜とは食べられるものを選んで摘み取る草という意匠になっている。この意匠によって食用になる草を意味する古典漢語ts'əgを表記する。