「策」

白川静『常用字解』
「形声。音符は朿シ。朿は先の尖った長い木。説文に“馬の箠むちなり” とあって、“馬に策(むちう)つ”のように使う。文字をしるす札である竹簡・木簡のことを簡策という」

[考察]
白川漢字学説には形声の説明原理がなくすべて会意的に説く特徴がある。朿(先の尖った長い木)+竹→馬にむちうつという意味を導く。
朿には「先の尖った長い木」という意味はない。朿は木からぎざぎざした刺(とげ)の出ている形で、「とげ」という意味である(「刺」で詳述)。しかし「とげ」という実体に重点があるのではなく形態や機能に重点がある。とげの形態に着目して、「ぎざぎざに(∧の形に)尖る」というイメージを示すのである。したがって策は先端を∧形に尖らせた竹を暗示させる図形。この意匠によってむちや杖を意味する古典漢語ts'ĕk(呉音ではシャク、漢音ではサク)を表記する。策は古典に次の用例がある。
①原文:策其馬。
 訓読:其の馬に策(むちう)つ。
 翻訳:自分の馬にむちを当てた――『論語』雍也
②原文:不書于策。
 訓読:策に書せず。
 翻訳:竹簡に記録しない――『春秋左氏伝』隠公十一年

①はむちという名詞から動詞に転用された意味。また杖という名詞と、杖をつくという動詞もある。②は竹簡の意味。昔文字を記した竹簡は竹を紐で結んで並べたもので、先端がぎざぎざでふぞろいの姿を呈したので、策とも称された。これから文書、計画などの意味を派生した。