「搾」

白川静『常用字解』
「形声。音符は窄。乍は木の枝を曲げる形。曲げた木の枝を穴の中に入れて穴を狭くすることを窄といい、穴の中に小枝を力を入れて手で押し込むことを搾という。それは力を入れてしぼる動作に似ているので、搾に“しぼる”の意味があるのであろう」

[考察]
白川漢字学説には形声の説明原理がなく、すべて会意的に説く特徴がある。乍(木の枝を曲げる)+穴→窄(曲げた木の枝を穴の中に入れて穴を狭くする) 窄+手→搾(穴の中に小枝を力を入れて手で押し込む)というぐあいに意味を展開させる。
穴に小枝を押し込むとはどういう行為であろうか。こんな意味の言葉は想像できない。字形から意味を導くのが白川漢字学説の方法であるが、図形的解釈と意味が混乱して、それらの区別があいまいである。
搾は唐宋以後に現れた字で、榨から派生した字である。榨菜(ザーサイ)などに使われる。
榨は「窄サク(音・イメージ記号)+木(限定符号)」と解析する。窄は「乍サ(音・イメージ記号)+穴(限定符号)」と分析する。乍は「間隔が短くなる」「幅が狭い」というイメージがある(647「作」を見よ)。窄は穴をぎゅっと締めつけて狭める状況を暗示させる図形。この意匠によって「間隔が狭い」という意味をもつtsăk(呉音でシャク、漢音でサク)という語を表記する。この語は「間隔が縮まる」「締めつけて狭める」というコアイメージがある。かくて榨は原料をぎゅっと締めつけて液体(油や酒など)をしぼり出す道具を暗示させる。これによって「しめ木」を表している。「液体をしぼる」という動作に特化させたのが、限定符号を木から手に換えた搾である。