「撮」

白川静『常用字解』
「形声。音符は最。最は冃ボウと取とを組み合わせた形。取は戦場で討ちとった者の左耳を手柄の証拠とするために切り取るの意味。切り取った多くの耳を覆って取り集めることを最、指先でつまむようにして取ることを撮といい、撮は“つまみとる、つまむ、とる” の意味となる」

[考察]
取に「戦場で討ち取った敵の左耳を切り取る」という意味はない。最に「切り取った多くの耳を覆って取り集める」という意味もない。これからなぜ「指先でつまむように取る」という意味になるのであろうか。切り取る→覆って取り集める→つまみ取るへの意味展開が不自然である。
最には「集める」というコアイメージがある(635「最」を見よ)。つまみ取る場合、親指・人さし指・中指の三本の指を集めて取る。最はこの取り方から発想された語である。この取り方では多くはつまめない。ごく少量である。この動作を抽象化して「ごく、きわめて」という程度の極端な在り方の用法に転じた言葉がtsuad(最)である。抽象化させる前の「つまみ取る」という具体的な行為を表す言葉をts'uat(呉音ではサチ、漢音ではサツ)といい、「最(音・イメージ記号)+手(限定符号)」を合わせた撮によって表記した。
古典に次の用例がある。
 原文:鴟鵂夜撮蚤。
 訓読:鴟鵂シキュウ夜蚤(のみ)を撮る。
 翻訳:フクロウが夜にノミを取った――『荘子』秋水
撮は指や爪の先でつまみ取るという意味で使われている。