「擦」

白川静『常用字解』
「形声。音符は察。際は神と人が相接する所をいい、察は祭ることによって神意をうかがいみること、神意に接することをいう。擦は相接して手でこするときの音を写したものであろう。それで擦は、“する、こする”の意味となる」

[考察]
白川漢字学説には形声の説明原理がなく、会意的に説く特徴がある。察(祭るこよによって神意に接する)+手→相接して手でこするときの音という意味を導く。しかし擬音語とするのは会意的解釈とは言い難い。「相接する」と「手でこする」が結びつきにくいので、擦を擬音語としたのであろう。
白川は擦は宋・元以後にできた字としている。しかし『全唐詩』には用例があり、こすり合わせるの意味で使われている。いずれにしても神意に接することから意味を導くのは時代錯誤であろう。擦に宗教色はない。
創作時代が新しい字も従来の漢字の造形法に外れているわけではない。擦は「察(音・イメージ記号)+手(限定符号)」と解析できる。察は「曇りをぬぐって汚れを払い清める」というイメージがある(659「察」を見よ)。「曇りをぬぐう」というイメージは「こすり合わせる」というイメージに転化する。この意味の言葉を擦で表記した。