「支」

白川静『常用字解』
「会意。十と又とを組み合わせた形。十は木の小枝。又は手の形。支は小枝を手で持つ形で、枝のもとの字。のち本に対する関係で、木から枝分かれしたものをいう」

[考察]
ほぼ妥当な説明であるが、本に対する関係から支に「枝分かれしたもの」の意味が出たというのは少し変である。支を字形から見るだけで、言葉という視点から見ていない。
支は古典では次の用例がある。
①原文:芄蘭之支
 訓読:芄蘭ガンランの支(えだ)
 翻訳:ガガイモの枝
②原文:文王孫子 本支百世
 訓読:文王の孫子 本支百世
 翻訳:文王の子孫は 本家と分家が百代あとまでも――『詩経』大雅・文王

①は「えだ」の意味、②は本体から分かれ出たものの意味で使われている。これを古典漢語でkieg(t∫iĕ、呉音・漢音でシ)という。これを代替する視覚記号が支である。
支は「个+又」に分析できる(篆文の字体)。个は竹の半分の形である。「个(一本の竹のえだ)+又(手)」を合わせた支は、个の形をした竹のえだを手に持つ情景を設定した図形。个はYを逆さにしたような形で、左右に分かれている。「本体からYの形に枝分かれる」というイメージを支で表すことができる。これがkiegのコアイメージであり、①のような具体的な意味と、②のような抽象的な意味が実現される。
意味はコアイメージによって展開する。「本体から枝分かれする」というコアイメージから、物を分けて出す(配分する)という意味に展開する。これが支給・支出の支。また、分かれ出るのは四方八方に出ることもあり、ばらばらになるという意味にも展開する。これが支離滅裂の支。また、Yの形にポイントを置くと、つっかい棒でささえるというイメージが生まれる。これが支援・支持の支で、じっと支えて持ちこたえるという意味である。