「仕」

白川静『常用字解』
「形声。音符は士。士は小さな鉞を、刃を下にして置いた形で、戦士階級の身分を示す儀礼用の器である。士は戦士階級として王に“つかえる” 者をいう。のちすべて上の人に“つかえる”ことを仕という」

[考察]
士の字源に関する疑問は678「士」の項で述べた。士の戦士・兵士という意味は「未婚の若い男」という意味よりも後に生まれた派生義である。仕を「戦士が王につかえる」という意味に取るのは誤りである。
白川漢字学説には形声の説明原理がなくすべて会意的に説く特徴がある。士(戦士)+人→戦士が王につかえると意味を導く。
ここには言葉という視点がすっぽり抜け落ちている。言葉の深層構造を見ようとする目がない。言葉のコアイメージを捉えて意味を探求するのが形声の説明原理である。もっとも意味は古典の文脈を調べれば分かることである。その意味がなぜそうなのかを明確にするのが語源的探求である。仕は古典に次の用例がある。
①原文:盡瘁以仕 寧莫我有
 訓読:尽瘁して以て仕ふるも 寧ろ我を有(かま)ふこと莫し
 翻訳:へとへとになるまであなたに仕えたのに 私をかばってくれなかった――『詩経』小雅・四月
②原文:令尹子文三仕爲令尹。
 訓読:令尹子文三たび仕へて令尹と為る。
 翻訳:令尹子文は三度出仕して令尹[官名]となった――『論語』公冶長

①は身分のある人につかえる意味、②は朝廷・政府につかえて役人になる意味で使われている。これを古典漢語ではdzїəg(呉音でジ、漢音でシ)という。これを代替する視覚記号が仕である。
仕は「士(音・イメージ記号)+人(限定符号)」と解析する。士はペニスが立つ情景を設定した図形である(678「士」を見よ)。ただし実体に重点があるのではなく形態や機能に重点がある。若くて元気な男子を士で表すのである。この語のコアにあるのは「(まっすぐに)立つ」というイメージである。この抽象的なイメージが仕で用いられる。貴人につかえるという事態は貴人の側に控えてじっと立つ場面が想像される。だから「まっすぐに立つ」というイメージをもつ士が利用されたのである。