「刺」

白川静『常用字解』
「形声。音符は朿。朿は先の鋭く尖った木。これを標木として使用することもあるが、突き刺すのに用いることもある。刺は“さす、つきさす” の意味」

[考察]
『説文解字』に「朿は木芒なり」とあり、朿の「とげ」の意味である。だから朿はとげを描いた図形であって、「先の鋭く尖った木」ではない。先端を尖らした木は何かの使用のために人工的に作ったものであろうが、「とげ」は自然界にある植物などのとげのことである。
しかし実体を重視するのではなく、形態や機能を重視するのが漢字の造形法、特に形声文字の説明原理である。白川漢字学説には形声の説明原理がなく会意的に説く特徴がある。だから先の鋭く尖った木で突き刺すという具合に意味を導く。
刺は古典で次の用例がある。
 原文:刺公子偃。
 訓読:公子偃を刺す。
 翻訳:公子の偃を刺し殺した――『春秋』成公十六年
刺は先の鋭利なもの(刃物など)でさす意味、また、さし殺すの意味で使われている。これを古典漢語でts'ieg(呉音・漢音でシ)という。これを代替する視覚記号として刺が考案された。
刺は「朿シ(音・イメージ記号)+刀(限定符号)」と解析する。朿は木からぎざぎざしたとげが出ている姿を図にしたもの。とげの形態に着目すれば、とげのぎざぎざは∧の形である。「∧の形に尖る」というイメージを朿で表すことができる。またとげの機能に着目すれば、とげは肌身をさすから、「(先が尖ったもので)さす」というイメージも朿で表すことができる。かくて刺は先の尖った刀(刃物)でさす状況を暗示させる図形である。