「姉」

白川静『常用字解』
「形声。もとの字は姊に作り、音符は𠂔。母のことを姐といい、巫女の長を女嬃という。姉・姐・嬃は同じ系列の語で、それぞれの地位・身分をあらわすものであろう。“あね”の意味に用いる」


[考察]
形声の説明原理がなく、会意的に説くのが白川漢字学説の特徴であるが、本項で𠂔からの説明ができない。姉は姐・嬃と同系列の語だから「あね」の意味だという。一見、語源的に究明したかのように見えるが、言葉という視座のないのが白川漢字学説の本質である。
姉の右側は楷書では市になっているが、市場の市とも、肺の右側とも異なる。柿シ(植物のカキ)の右側と同じである。姉は「女+𠂔」と分析する。𠂔を分析すると「𣎵+一」となる。𣎵は𣏕(こけらを意味する柿ハイと同じ)の右側と同じ。𣎵の中ほどに「一」をつけた字が𠂔である。𣎵は「屮(草の芽)+八(左右に分かれる符号)」を合わせて、草の芽が左右に分かれ出る情景を設定した図形。𣎵に「一」をつけた𠂔は草が伸び切ってストップする状況を暗示させる。『説文解字』では「𠂔は止なり」とある。𠂔は「これ以上は行けないいちばん上まで出る」というイメージを表す記号になりうる。したがって姉は女きょうだいのうち、いちばん年上の女を暗示させる。
ちなみに『詩経』に大数の名として秭シが出ている。大数は億―兆―京―垓と進み、次が秭(10の24乗)である。『詩経』の時代ではこれが最大の数であった。その後、穣―溝―澗―正―載―極が生まれた。