「祉」

白川静『常用字解』
「形声。音符は止。説文に“祉は福なり” とあり、合わせて福祉(幸福。さいわい)という」

[考察]
白川漢字学説は形声も会意的に説くのが特徴であるが、本項では止から説明せず、福祉という熟語で「さいわい」の意味だという。祉自体の説明がない。
『説文解字』の解説書である『説文繫伝』(宋・徐鍇撰)には「祉の言は止なり。福の止まる所移らざるなり」と、明確に語源を説いている。
祉は語史が古く、次の用例がある。
 原文:吉甫燕喜 既多受祉
 訓読:吉甫は燕喜す 既に多く祉シを受く
 翻訳:吉甫はくつろぎ楽んだ たっぷり幸せを賜った――『詩経』小雅・六月
祉は幸せの意味で使われている。これを古典漢語ではt'iəg(呉音・漢音でチ)という。これを代替する視覚記号が祉である。
祉は「止シ(音・イメージ記号)+示(限定符号)」と解析する。止は「一所にじっと止まる」というイメージがある(681「止」を見よ)。示は神と関係があることを示す限定符号である。したがって祉は神の恩恵がその身にじっと止まる状況を暗示させる。上記の用例にもある通り、他人から恩恵として与えられる幸福が祉である。