「紙」

白川静『常用字解』
「形声。音符は氏。“かみ” をいう」

[考察]
白川漢字学説には形声の説明原理がなく会意的に説くのが特徴である。本項では会意でも説明できていない。氏からの説明がない。
「かみ」の製法は中国人の発明である。 後漢の蔡倫が従来の製法に改良を加えて現在のような紙になったといわれる。紙という漢字も後漢の頃に創作された。
遅くできた漢字であるが、漢字の造形法にのっとっている。紙は「氏(音・イメージ記号)+糸(限定符号)」と解析する。氏はスプーンの形で、「薄くて平ら」というイメージを示す記号になりうる(682「氏」を見よ)。氏のイメージが生きているのは舐シという字である。薄くて平らな形状をもつ舌で物の表面をぺろりと舐めるという意味である。舐に使われた氏のイメージを利用して「氏+糸」を合わせた紙が創作された。
ちなみに日本語の「かみ」は簡(竹簡・木簡の簡)の音kamにiがついて転化したという説がある。しかし簡の中古音はkʌnの音だからカミとはならないだろう。ただし『大言海』ではカヌ→カニ→カミに転じたという。ミラがニラ(韮)になるのと反対の現象かもしれない。