「誌」

白川静『常用字解』
「形声。音符は志。志は心がある方向をめざして行くこと(こころざし)をいい、また心にしるすの意味に用いる。誌は志に対してその動詞的な用法と考えられ、“しるす”とよみ、またその“しるされたもの、かきつけ、記録”をいう」 

[考察]
志の「こころざし」と「心にしるす」の関係がはっきりしない。また誌が志に対して動詞的用法というのが分からない。名詞が「こころざし」、動詞が「しるす」というのは変である。また「心にしるす」と「記す、記録」との関係もはっきりしない。
誌はどんな意味で使われているのか。古典の用例を見てみる。
 原文:太古之事滅矣、孰誌之哉。
 訓読:太古の事滅す、孰(たれ)か之を誌(しる)さんや。
 翻訳:大昔のことは消滅している。それを記している者がいるだろうか――『列子』楊朱
誌は書き記す意味で使われている。「心にしるす」は記憶すること、「書き記す」は文字などを書くことで、意味
が違う。しかし共通点がある。「(消えないように)とどめる、じっと止めておく」というイメージが共通である。一方は精神的なもの、他方は物質的なものだが、イメージは垣根を飛び越える。
誌は「志(音・イメージ記号)+言(限定符号)」と解析する。志は「之+心」、之は「止+一」と分析でき、止にコアイメージの源泉がある。止は「進む」と「止まる」の反対のイメージをもつ記号である(681「止」を見よ)。志も同じである(695「志」を見よ)。「止まる」のコアイメージを用いて、誌は言葉や文字を書き止めることを暗示させる。