「諮」

白川静『常用字解』
「形声。音符は咨。咨は祝詞を唱え、神になげきながら訴える、なげきはかるの意味であったが、咨が咨嗟する(なげく)の意味に用いられるようになり、諮の字が作られた。諮は訴えてことを相談するの意味」

[考察]
咨は「次+口」からなぜ「祝詞を唱え、神に嘆きながら訴える、嘆きはかる」という意味になるのか。次の説明がない。また「嘆きはかる」とはどういうことか。咨が「なげく」の意味になり諮が「はかる」の意味になったというが、「嘆く」と「はかる」はどういう関係があるのか、はっきりしない。
字形から意味を引き出す方法には限界がある。むしろ誤った方法である。
古典から諮の使い方を見てみる。咨と諮はきわめて語史の古い言葉である。
①原文:載馳載驅 周爰咨諏
 訓読:載(すなは)ち馳せ載ち駆り 周(あまね)く爰(ここ)に咨諏シシュす
 翻訳:馬にむち当て車を飛ばし あちらこちらとたずね行く――『詩経』小雅・皇皇者華
②原文:必諮於周。
 訓読:必ず周に諮る。
 翻訳:必ず周国と相談する――『春秋左氏伝』襄公四年

①②とも上位者が下位者に意見を求めて相談する意味で使われている。これを古典漢語でtsier(呉音・漢音でシ)という。これを代替する視覚記号として最初は咨、次に諮が考案された。
咨は「次(音・イメージ記号)+口(限定符号)」と解析する。次は「つぎつぎに並べる」というイメージがある(728「次」を見よ)。口は言葉や言語行為と関係があることを示す限定符号。咨は意見をつぎつぎに並べる状況を暗示させる図形。この意匠によって、意見を出させて相談することを意味するtsierを表記した。のちに咨は嘆息の声(「ああ」と読む)に転義したので、上位の人が下位の人に意見を出させて相談する(諮る、諮問する)の意味に専用するため、「咨(音・イメージ記号)+言(限定符号)」を合わせた諮が作られた。