「侍」

白川静『常用字解』
「形声。音符は寺。寺に侍るの意味があり、古くは宮中にあって側近に侍る宦官を寺人といった。のち“はべる、つかえる” という動詞には、にんべんを加えた動詞的な字の侍を用いる」

[考察]
727「寺」では寺は「もつ」の意味で持の原字とあるが、本項では「はべる」の意味で侍の原字としている。不統一である。寺には「もつ」の意味も「はべる」の意味もない。
白川漢字学説には言葉という視点がなく、形声の説明原理がない。言葉の深層構造に掘り下げて、語源的に探求しないと、言葉は正しく理解されない。まず古典から用例を尋ねることが先決である。意味は具体的文脈に現れるものである。
 原文:顏淵季路侍。
 訓読:顔淵季路侍す。
 翻訳:顔回と子路は[孔子の側に]控えて立っていた――『論語』公冶長
侍は身分の高い人や目上の人の側にじっと立って控える(はべる、仕える)という意味である。これを古典漢語ではdhiəg(呉音でジ、漢音でシ)という。これを代替する視覚記号が侍である。 
侍は「寺(音・イメージ記号)+人(限定符号)」と解析する。寺は「まっすぐ進む」と「じっと止まる」の二つのイメージがある(727「寺」を見よ)。ここでは「じっと止まる」のイメージが用いられる。侍は貴人の側にじっと立ち止まる情景を設定した図形である。