「軸」

白川静『常用字解』
「形声。音符は由。由のもとの形は卣で、ひさご(瓢簞の類)であり、中の実が熟して溶け、殻の中がからっぽになった形。中がからっぽで回転するものを軸という」

[考察]
「殻の中がからっぽ」と「回転する」とに必然的はつながりがあるだろうか。「からっぽ」からなぜ「回転する」の意味が出るのか分からない。また回転するものが軸の意味だろうか。また車への言及がないから、車との関係も分からない。
字形から意味を引き出すのが白川漢字学説の方法であるが、意味の取り方、導き方が不自然である。意味とは「言葉の意味」であって字形に求めるのは筋違いである。意味は言葉が使われる文脈に求めるべきである。軸は次のような文脈で使われている。
 原文:積羽沈舟、群輕折軸。
 訓読:積羽舟を沈め、群軽軸を折る。
 翻訳:羽が積もると舟をも沈め、軽いものが集まると軸をも折る――『戦国策』魏策
軸は車輪の中心を通る心棒の意味で使われている。これを古典漢語ではdiok(呉音ではヂク、漢音ではジク)という。これを代替する視覚記号として軸が考案された。
軸は「由(音・イメージ記号)+車(限定符号)」と解析する。由の字源については諸説紛々で定説はないが、カールグレン(スエーデンの中国語学者)が、ある範囲から出ていく図形で、それによって「~から出ていく」ことを示したと解釈したのが比較的良い。由は何かの実体を表すのではなく、ある区画(曰)から上方に縦棒(|)が抜け出る状況を示す象徴的符号と解したい。この意匠によって、「ある所・範囲を通って出てくる」「通り抜ける」というイメージを示す記号になりうる。かくて軸は車の車輪と車輪の間を通って両端が抜け出た心棒を暗示させる。