「捨」

白川静『常用字解』
「形声。音符は舎。舎はㅂ(祝詞を射る器)を把手のついた長い針で上から突き刺し、祈りの働きを傷つけ、祈りの効果をすてさせることをいう。捨はそれに手を加えて、その行為を示す形声の字とした」

[考察]
舎の解釈の疑問については758「舎」で述べたから繰り返さない。ここも同じ疑問がある。
舎の「すてる」という意味は転義であって本義ではない。祈りの効果をすてさせることから「すてる」の意味になったわけではない。
舎には「ゆったりと伸ばす」というコアイメージがあり、「(緊張したものを)広げて伸ばす」「(締まったものを)緩める」というイメージに展開する。このコアイメージから体をゆったりさせてくつろぐ所(宿舎の舎)、また、ゆったりと休息する(休む、やむ)という意味が生まれる。また、手を緩めて放つという意味、手を緩め伸ばして握った物をすてるという意味が実現される。この最後の「すてる」の専用字として捨が作られた。
舎の意味はすべて先秦の文献に見える。捨は漢代の文献に初めて登場する。