「赦」

白川静『常用字解』
「会意。赤は大(手足を広げて立つ人)に下から火を加えて清める儀礼で、穢れのある者に対して行う懲罰的な穢れを祓う方法である。さらに木の枝を又(手の形)に持つ形のと攴(攵)を加えて殴ち、罪を祓い清めることを赦という」

[考察]
形声の説明原理がなく、会意的に説くのが白川漢字学説の特徴である。赤(穢れを祓う儀礼)+攴(木の枝を持つ)→木の枝で殴って罪を祓い清めるという意味を導く。
図形的解釈をストレートに意味とし、図形的解釈と意味を混同するのも白川漢字学説の特徴である。その結果あり得ない意味が生まれる。赦に上のような意味があるだろうか。意味とは「言葉の意味」であって字形にあるわけではない。言葉が使われる文脈にある。赦は次のような文脈で使われている。
 原文:君子以赦過宥罪。
 訓読:君子は以て過ちを赦し罪を宥す。
 翻訳:君子は過失を赦し、罪を許す――『易経』解
赦は罪を許して放す意味である。これを古典漢語でthiăg(呉音・漢音でシャ)といい、赦で表記した。
『爾雅』(最古の辞書)に「赦は舎なり」とある。赦と舎が同源だというのである。王力(現代中国の言語学者)は赦・捨・釈を同源としている(『同源字典』)。ほかに卸シャ・射・謝とも同源といえる。これらの語には「(緊張した状態を)緩める」というコアイメージがある。厳しい刑罰を緩めるというのがthiăg(赦)の意味である。
以上は語源的に検討したが、字源はどういう工夫がなされているのか。
赦は「赤セキ(音・イメージ記号)+攴(限定符号)」と解析する。赤は「大(手足を広げた形→広がって大きいさま)+火」を合わせて、火が四方に広がって燃える情景を設定した図形。これで「四方に広がる」というイメージを表しうる。攴は動作・行為に限定する符号。したがって赦は罪人を四方に放つ情景を設定した図形。この意匠によって、刑罰を緩めて解放することを暗示させる。