「遮」

白川静『常用字解』
「形声。音符は庶。庶は厨房の屋根(广)の下に廿(鍋の形)を据えつけて、下から火を加えている形で、にるの意味となる。“さえぎる” の意味には、者を要素とする字のほうがふさわしい。者と庶は音が近いので古くから混同し、誤って交替して使用されたのである」

[考察]
白川漢字学には形声の説明原理がなく会意的に説くのが特徴である。しかし会意的に説明できていない。庶は「にる」の意味というが、ではなぜ「さえぎる」の意味なのかの説明がつかず、「さえぎる」には者の字がふさわしいというだけである。しかし者に辶をつけた字は存在しない。
遮は古典で次の用例がある。
 原文:子不遮乎親、臣不遮乎君。
 訓読:子は親に遮られず、臣は君に遮られず。
 翻訳:子は親に邪魔されず、家来は君主に邪魔されない――『呂氏春秋』応同
遮は進行を邪魔する、さえぎって止めるという意味で使われている。これを古典漢語でtiag(呉音・漢音でシャ)という。これを代替する視覚記号として考案されたのが遮である。
遮は「庶ショ(音・イメージ記号)+辵(限定符号)」と解析する。庶は「炗(=光) +广(家を示す限定符号)」を合わせて、家の中に光を採り入れる情景を設定した図形(後に「庶」で詳述)。これは図形的意匠であって意味ではない。「たくさん集まる」というイメージを表す記号である。物がたくさん集まるといっぱい詰まった状態になる。だから「詰まる」「満ちる」「塞がる」というイメージが生まれる。かくて遮は障害物が多く集まって通り道が塞がれ、行く手を塞ぎ止めるという状況を暗示させる。この図形的意匠によって上記の意味をもつtiagを表記する。