「勺」

白川静『常用字解』
「象形。匕杓の形。水などを汲むのに用いるさじの形をした器である。“ひしゃく、くむ”の意味に用いる」

[考察]
字源説としては妥当である。ひしゃくの意味では専ら杓が使われ、勺は尺貫法の単位として使われる。
度量衡の単位のうち量(かさ)は容器で量ったので、容器を単位の名とした。小さい方から勺、合、升、斗、石(斛)である。勺はひしゃくなので容量としては小さい。合の10分の一が勺である。もともとは龠ヤクであったが、後に勺に変わった。
勺は的・約・釣・豹などにも構成要素として使われる。これらを説明するには勺の語源にも踏み込む必要がある。勺の機能面を捉えて「高く上がる」というイメージが生まれる。高いと言っても限度があるが、液体を汲み上げるという働きから「上に上がる」「高く上がる」というイメージが捉えられたのである。高く上がると物は目立つので「目立つ」というイメージにも転化する。高く上げて目立つようにしたのが弓の的、目立つ目印をつけることが約束の約である。また魚を釣り上げる行為が釣である。