「酌」

白川静『常用字解』
「形声。音符は勺。勺は匕杓の形で、酉は酒樽の形。酒樽から杓で酒を“くむ” ことを酌という」

[考察]
形声文字も会意的に説くのが白川漢字学説の特徴である。会意とはAの意味とBの意味を足し合わせた「A+B」をCの意味とするもの。勺(ひしゃく)+酉(酒樽)→酒樽から酒をくむという意味を導く。
これは字形の解釈をストレートに意味としている。意味はただ「(酒を)くむ」であって、酒樽は意味素に入らない。
形声の説明原理とは言葉の深層構造に掘り下げ、コアイメージを捉えて意味を説く方法である。ただし意味は言葉が使われる文脈から知るものであって、語源から意味を正確に理解するのが狙いである。
酌は「勺(音・イメージ記号)+酉(限定符号)」と解析する。勺はひしゃくに液体が入っている姿を描いた図形である。勺の機能は液体を汲み上げることにある。だから「上に上がる」「高く上げる」というコアイメージがある(770「勺」を見よ)。酉は酒に関係があることを示す限定符号。したがって酌を酒を汲み上げる情景を暗示させる。