「爵」

白川静『常用字解』
「象形。酒器である爵の形。“さかずき” をいう」

[考察]
酒器の一種ではあるが、杯(さかずき)のような小さなものではない。雀の形に象った酒器である。これを古典漢語ではtsiɔk(呉音でサク、漢音でシャク)という。雀ジャク(tsiɔk)と同音である。スズメの鳴き声は節節と形容され、短い切れ目のあるリズムと見なされた。tsiɔkという語には「切れ目」というコアイメージがあり、節(ふし目)、截セツ(短く断ち切る)、嚼シャク(歯でかみ切る)などと同源の語である。爵はこれらと同じ仲間の語で、飲み過ぎを節制するという寓意があるといわれる。
五等爵(公爵・侯爵・伯爵・子爵・男爵)に用いられるが、爵位の爵は功績のあった臣下に君主から爵(酒器)を賜ったことに由来する。『孟子』に「朝廷、爵に若(し)くは莫し」(朝廷では爵位にかなうものはない)という用例があり、由来は古い。