「手」

白川静『常用字解』
「象形。手の形。手首から先の、五本の指を開いた形である。手は手首をいう語であったかもしれない」

[考察]
手首から先の五本指を描いた図形で、指と掌を含めた部分である。手首は腕ワンといい、手とは違う。字源はこの通りであるが、字形から意味が出るのではない。
古典では次の用例がある。
 原文:手如柔荑
 訓読:手は柔荑ジュウテイの如し
 翻訳:[彼女の]手は柔らかいつばなのようだ――『詩経』衛風・碩人
つばなとはチガヤの白い穂のこと。白い手を形容している。手のことを古典漢語ではthiog(呉音でシュ・ス、漢音でシウ)という。これを代替する視覚記号が手である。
なぜ手をthiogというのか。これは語源の問題である。手の機能は物をつかむことにある。形態的には五本の指を曲げて物を囲むような形になる。ここに「中のものを外枠で囲む」「周囲をぐるりと取り巻く」というイメージがある。収・囚・周などは手と共通のコアイメージがある。字源だけではなく語源を究明して初めて漢字の成り立ちの説明は完結する。