「狩」

白川静『常用字解』
「形声。音符は守。獣が狩のもとの字であるが、のち狩猟によって捕えた“えもの、けもの”をいう字となり、“かり、かる” の意味には形声の字の狩が作られた」

[考察]
形声の説明原理がなく会意的に説くのが白川漢字学説の特徴であるが、本項では会意的に説明できず、狩の字源を放棄している。
形声の説明原理とは言葉の視点に立って、言葉の深層構造に掘り下げ、コアイメージを捉えて、意味を説明する方法である。意味は字形に求めるべきではなく、言葉の使われる文脈に求めるべきである。
狩は古典に次の用例がある。
 原文:不狩不獵 胡瞻爾庭有縣鶉兮
 訓読:狩りせず猟せずんば 胡(なん)ぞ爾の庭に県鶉ケンジュン有るを瞻(み)んや
 翻訳:狩りをしなけりゃ お前の庭にウズラ一羽も吊せまい――『詩経』魏風・伐檀
狩は獣をかる意味である。これを古典漢語ではthiog(呉音でシュ、漢音でシウ)という。これを代替する視覚記号として狩が考案された。
古人は「狩は守なり」という語源意識をもっていた。「守る」という意味ではない。狩は守と同源の語だというのである。それは根底(核、コア)におけるイメージが共通だということである。守のコアイメージは「中のものを外枠で囲む」「周囲をぐるりと取り巻く」である(781「守」を見よ)。獣をかる行為にこのコアイメージを見出して生まれたのがthiog(狩)である。
狩は「守(音・イメージ記号)+犬(限定符号)」と解析する。守は上記のコアイメージがある。犬は犬と関係があることを示す限定符号である。したがって狩は犬や勢子が周囲を囲んで獲物を追い立てる情景を設定した図形である。この図形的意匠によって「かり」「かる」の意味をもつthiogを表記する。