「首」

白川静『常用字解』
「象形。頭の髪の毛と目とをしるした、首の形。首は人体の中でもとくに大切な部分であるから、中心になる人やものの意味となる」

[考察]
首は「くび」の意味ではなく、「あたま、こうべ」の意味である。「くび」は古典漢語では頸ケイという。あたまは人体のトップにあるから、首は「かしら、トップ、おさ」「始め、最初」「一番目」の意味に展開する。
古典漢語で「あたま」をいう言葉に二つある。首(thiog)と頭(dug) である。二つは「あたま」の捉え方(発想)が違う。コアイメージが違い、使い方が違う。首はどんなイメージから発想された言葉か。
あたまはつなぎ目の位置に当たる頸が胴体から上方に延び出た形をしている。この形態的特徴から「ある方向に向かって延びる」というイメージが生まれる。thiog(首)はこのコアイメージをもつ言葉である。
thiogを表記する首は髪の生えた頭部を描いた図形である。図形はただ頭部を暗示させるだけで、コアイメージを示す指標はない。しかし字源を説明するだけでは十分ではない。語源を究明しないと次の用例が分からなくなる。
 原文:東首、加朝服。
 訓読:東に首(むか)ひ、朝服を加ふ。
 翻訳:[病気の時に]東に枕を向け、官服を着た――『論語』郷党
この首は「むかう」という動詞である。上記の「ある方向に向かって延びる」というコアイメージから上のような使い方(すなわち意味)が生まれるのである。
また、自首という使い方がある。この首は何か。警察に自分の首を差し出すのか。この場合は警察に自ら出向いて罪を告げることである。