「珠」

白川静『常用字解』
「形声。音符は朱。珠にまるいもの、また朱色のものの意味がある。珠を説文は真珠の意味とするが、もと玉ぎょくの類をいう字であろう」

[考察]
朱に朱色の意味はあるが、「まるいもの」「朱色のもの」という意味はない。珠が「たま」の意味だから「まるいもの」としたのであろうが、朱色とは関係がない。この字源説は不十分である。
珠はパール(真珠)の意味である。古典に次の用例がある。
 原文:寶珠玉者、殃必及身。
 訓読:珠玉を宝とする者は、殃(わざは)ひ必ず身に及ばん。
 翻訳:真珠や玉を大切にする人は必ず禍に遭うだろう――『孟子』尽心下
『孟子』より古い文献である『書経』には蠙珠の語が見える。蠙ヒンは蚌(ドブガイ、またはカラスガイ)と同じで、古代中国ではカラスガイから真珠を採った。だから真珠のことを蚌珠ともいう。
珠は「朱(音・イメージ記号)+玉(限定符号)」と解析する。朱は「途中で断ち切る」というイメージがある(782「朱」を見よ)。図示するとー|ーの形である。これは「二つに割って切り離す」というイメージに転化する。珠は貝を二つに割って取り出した玉を暗示させる。この意匠によってパールを意味する古典漢語tiug(呉音でス、漢音でシュ)を表記した。